白菊ほたる『災いの子』
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193: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/16(月) 00:11:42.87 ID:we/MuDDP0
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 蘭子さんと飛鳥さんと別れ、事務所を出る。外は、暖かな日差しが降り注いでいた。
 地面にところどころシミがあり、植え込みの葉っぱに水滴がついている。少し前まで雨が降っていたらしい。
 珍しい、と思った。
 それまで晴れていたのに自分が外に出たとたんに突発的な豪雨に襲われる、なんてことは珍しくもなんともない。もはや運が悪いとも思わない、当たり前の日常の光景だ。
 だけどその逆は、少し前まで雨が降っていたのに自分が外に出たタイミングで晴れているなんてことは、ちょっと身に覚えがない。

 気温はほどよく、暑くも寒くもなかった。
 ぽかぽかした陽光は暖かく、吹き抜ける風は涼しいと感じた。息を吸い込むと、どこからか漂ってきたお花の香りが鼻腔をくすぐった。
 夕美さんは、雨も好きだと言っていた。
 だけど私はやっぱり、晴れた日のほうが好きだ。お日様の下は気持ちがいい。ただ歩いているそれだけで、なんだか楽しい気分になってくる。

 神社への道のりを歩きながら、ライブのことを思い出す。
 途中でマイクが壊れて、私はマイクなしで歌った。広い会場だったけど、私の声は客席の、いちばん後ろのほうの席まで届いていたらしい。
 よくレッスンで声が小さいと叱られていた私に、そんな声量があっただろうか?
 無我夢中だったから、よく覚えていないけど、あのときは、なにか不思議な力が私を助けてくれたような感じがした。


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