191: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/16(月) 00:09:42.41 ID:we/MuDDP0
*
今日、私が事務所にやってきたそもそもの用件は、自主レッスンのためだった。だけど、この日はあいにくと、空いているレッスン室がなかった。
少し考えて、私はレッスンはあきらめ、久しぶりに神社にお参りに行くことにした。事務所からそう遠くないところにあるそこは、プロデューサーさんが初めて私を見た場所でもあるらしい。
事務所の出口に向かっている途中で声をかけられる。
振り返ると蘭子さんが、その隣には飛鳥さんもいた。
「先頃の至高なる桜の狂宴、血が滾る想いであった。幾度ものカタストロフの中、災いの子が紡ぎし深淵の絶唱は、ゲヘナの火の如き灼熱を持って今も我が魂を焦がしているわ!」
すらすらと、振り付けのような身振りをまじえて蘭子さんが言う。
私は、返す言葉に詰まった。
「翻訳が必要かな?」と飛鳥さんが言う。
「あ、いえ……なんとなくわかりましたから、だいじょうぶです。……おふたりとも、ライブ見に来てくれてたんですね。ありがとうございます……」
「フム? 伝わったにしては、なにやら浮かない顔だね。今のは蘭子にとって、最上級の賛辞だったと思うのだけど」
「えっと……本当に嬉しいんですけど、ちょっと……『災い』というのが……」
202Res/248.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20