白菊ほたる『災いの子』
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180: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/07/15(日) 23:57:23.30 ID:1DFdeF0E0
 気付けば、私の手はしがみつくように夕美さんのお洋服をつかんでいた。
 とめどなく涙があふれた。
 喉からは言葉にならない、動物の唸り声みたいな音がもれていた。
 なにも考えることができず、こらえることもできなかった。
 恥ずかしいという思いも、夕美さんのケガを心配することも忘れて、ひからびて死んでしまうんじゃないかというぐらい泣き続けた。

 夕美さんはなにも言わずに、ずっと私の背中をなでてくれていた。



 コンコンとノックの音、それからドアが開かれる音がした。

「ここかな? お疲れさーん……って、なんだこの状況」

 周子さんの声だった。

「お、周子ちゃん。ちょっと見ないあいだに髪伸びたね」と志希さん。

「そんなわけあるかーい! で、これなに? あたしお邪魔だったかな?」

「いやー、あたしもいいにゃーって思いながら見てたとこだったから。ちょうどよかった、周子ちゃん相手してよ」

「余計にわけわからん状況になるよ。夕美ちゃんに代わってもらったら?」

「んー、どっちかというと、ほたるちゃんのほうがうらやましいかにゃ」

「夕美ちゃんに抱きつきたいの? いつもやっとるやん」

「まあそうなんだけどねー」

 にゃっはっはと、志希さんの笑う声がする。

「なんだか今のほたるちゃん、すごく幸せそうだから」


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