70:名無しNIPPER
2018/06/12(火) 23:29:07.91 ID:psAQX80k0
当然彼女たちが魔法少女になれば、その分マミの負担は減る。
キュゥべえと一緒に、セールスマンのように全力で魔法少女の魅力を語って引き入れようとしてもおかしくないはずだ。
だが、彼女は決して2人に魔法少女になることを勧めたりしなかった。
その実情と弊害を事細かに語り、本当にその覚悟があるのか問いただしている。
普段は柔和な表情のマミだが、その話をする時は真剣な目つきをしていた。
どんな気持ちだったのだろう?
彼女たちが魔法少女にならなければ、またマミは1人ぼっちになる。
それを承知の上で、全部背負ってやると言外に語っているのだろうか。
「……、すごいなマミさんは」
思わず声が漏れた。
自分が同じ立場だったとして、同じ選択ができるとは口が裂けても言えない。
そこまで強くない。
だが、そういう風にありたいと思う気持ちはある。
何の取り柄もない自分に、そうなれるチャンスがあるのなら、チャレンジする価値はあるのかもしれない。
「君ならマミを超える魔法少女になれるよ。その素質は間違いなくある」
「……本当に?」
まどかは目を丸くして聞き返す。
「ああ、本当さ」
キュゥべえは間髪入れずに答えた。
その真っ赤な瞳は、相変わらず何を考えているのか読めない。
気づけば、まどかは自宅のすぐ近くまで来ていた。
考え事をしながら歩いていたからか、意外な程時間が経つのが速く感じる。
両親にただいまと言って、彼女は自室のベッドの上に仰向けで寝転ぶ。
低反発なクッション材は、身体を包み込むように受け止めてくれた。
「魔法、少女……」
何気なくポツリと呟く。
使い慣れたベッドの上で、身体はリラックスしているはずなのに、何か胸の奥にチリチリとした熱さを感じる。
思考を止めるな、と身体が脳に命令しているかのように。
「……なれるのかな?」
思い返せば、これまでまどかには理想の人物像というのは無かったように思う。
自分に自信のない彼女にとって、両親や親友のさやか、仁美などの事はそれぞれ凄いと思うし自慢でもあるが、自分がそうなりたいかと言われると少し違う気がするのだ。
それは恐らく、自分にはなれないと分かっているからなのだろう。
背の低い少年が、バスケットのスター選手に憧れても本気で目指そうとはしないように。
だが、今回巴マミという少女と出会えた事で、空白だった未来図に輪郭ができようとしていた。
そうなれる可能性がある。
その言葉は埋もれていたとある感情を刺激する。
憧れという気持ちを。
そして、その気持ちに従いたいとまどかは思った。
例えそれがどんな結末であろうと。
「私も、なれるかな」
彼女はスマートフォンを操作し、電話帳の中から1つの連絡先を表示する。
そこには、昨日交換したばかりの目新しいアドレスがあった。
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