65:名無しNIPPER
2018/06/12(火) 06:47:58.22 ID:psAQX80k0
誉望がそんな事を考えていると、垣根の方からネタバラシがあった。
「さっきの研究所でカメラを総括するホストコンピューターを裏側から操作して特殊な無線で繋いである。この端末をデバイスの一つだと認識させた訳だ」
「……ガチ犯罪じゃないっスか。しかもそれ逆探知される危険性があるし」
「回線は俺の能力を使って暗号化してるから心配ねえよ。見つかったとしても解析しようとすると、あやとりみたいにほどけて元の形が分からないようになる仕組みだ」
仮にもクライアントに対してなんてことしてるんだ。
誉望は呆れそうになるが、当の本人はあっけらかんとした表情で気にも留めない。
何罪悪感に苛まれてんだオマエは、と面倒臭そうに言って垣根はタブレットの側面から数センチ程度の小さなチップを取り出した。
恐らくこれが研究所のコンピューターとタブレットを繋ぐツールなのだろう。
これなら何か不都合が起きてもすぐにチップを処分すれば誤魔化せる。
彼の用意周到さに驚く事はないが、本当に私利私欲の為だけに動いてる事を改めて確認させられる誉望。
「俺たちが責められる言われはねえよ。そもそも、あの研究施設自体が街中の監視カメラをハッキングしたり、勝手に住民の個人情報を管理したりと違法行為のオンパレードじゃねえか。なら自分がやられるのも覚悟しねえとな」
当然といった様子で垣根は言う。
極めて独善的だとは思うが、そんなのは今に始まったことではない。
もはや反論する気にもならない誉望は、サラダをプラスチックのフォークでつつきながら質問する。
「それで、何か収穫はあったんスか?」
「ああ」
垣根はニヤリと口角を上げ、タブレットに保存されたムービーを表示する。
全部で10個以上ある。
どうやら監視カメラの映像から一部分を切り取っているようだ。
映像には巴マミと、同じ制服の少女2人が街中を歩く姿が収められていた。
内1人は手に金属バットを持っている。
「学校の友達ですかね?」
「どうやら後輩みたいだな」
はあ、そうっスか。と気の抜けた声を出す誉望。
いまいち意図が掴めない。
映っているのは、3人の少女が放課後仲睦まじく駄弁りながら歩いている姿で、そこに特に不自然な点はない。
何でわざわざこんなシーンを切り取って保存したんだろう?
不思議に思いながら見ていると、数十秒のムービーは何も起こらないまま終了した。
「……ええと垣根さん。特にコメントのしようがないんスけど、何か変な仕草とかありました?」
「いや、別におかしな"行動"はしてねえよ」
垣根はきっぱりと言い切った。
じゃあ何で保存したんスか、と聞く前に彼は続けて言う。
「問題は会話の内容だ」
「会話?」
怪訝な表情で誉望は聞き返した。
が、垣根の答えは変わらない。
「……、」
とりあえずもう一度ムービーを再生してみる。
確かにずっと何かを喋っているが、当然監視カメラに音声機能はない。
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