14:名無しNIPPER
2018/05/06(日) 15:00:03.11 ID:tVC08wRX0
「今日はみなさんに大事な話があります」
今朝のホームルームは、息巻く担任、早乙女和子の宣言で始まった。
「目玉焼きは半熟ですか? それとも固焼きですか? はい中沢くん!」
突然の指名を受けた男子生徒は、担任の謎の気迫に気圧されながら、どっちでもいいと思います、無難な答えを返す。
その通り! と和子は持っていた指示棒をへし折り、
「たかが玉子の焼き加減なんかで女の価値は決まりません! 女子の皆さんは、くれぐれも半熟じゃないと食べられないとかぬかす男とは交際しないように! そして男子の皆さんは、絶対に玉子の焼き加減に文句をつけるような大人にならないように!」
ベラベラと捲し立てる和子を見ながら、まどかは級友のさやかと顔を見合わせる。
「駄目だったかー」
「みたいだね」
どうやら、3ヶ月交際していた男性とは破局したようだ。
愚痴を吐き出し、スッキリした和子はゴホンと咳をして気を取り直すと言った。
「では、突然ですが転校生を紹介します。暁美さーん!」
一呼吸置いた後、うおおぉぉぉ! という男子の歓声と、何でこっちが後なんだよ、という冷静なツッコミが教室にこだました。
失礼します、と言って入ってきたのは長い黒髪の女の子だった。
(うわー、綺麗な子だなぁ……)
まどかは一目でそう思った。
モデルのようなスラッとした立ち振舞いに、切れ長の目。
まだ教室に入って教壇の上に立っただけなのに、その動作の一つ一つにどこか中学生離れした気品を感じさせる。
周りの生徒(特に男子)も同じ感想らしく、おおぅ……、と感嘆のような呻きがあちこちから聞こえた。
「暁美さんは、この秋ご両親の仕事の都合で、東京から見滝原に越してこられました。みなさん仲良くして下さいね」
「暁美ほむらです」
彼女は深々とお辞儀すると、簡単な自己紹介を始めた。
「まだ、この街について分からないことだらけなので、色々教えてもらえると助かります」
それと、と彼女は続け、
「趣味は特にありませんが、幼い頃から科学や超能力といった分野には興味がありました。この街は学園都市と提携しているそうなので、そういった話ができたらうれしいです」
彼女はそう締めくくって、もう一度頭を下げた。
パチパチパチ、とクラス中から歓迎の拍手が飛ぶ。
(へぇ、以外だなぁ)
とまどかは思った。
(見た目的には窓辺で本とか読んでる方が様になりそうだけど)
女子でそういったジャンルが好きと大っぴらに言うのは珍しいかもしれない。
そう思ってまどかは改めてほむらの顔を見る、と、
(ん……?)
ばっちりと目が合った。
たまたま目線が合ってしまっただけかと思ったが、ほむらは中々視線を外そうとしない。
じっ、とこちらを見つめている。
(え……? え?)
以前どこかで合っただろうか? 急いで記憶を辿ってみるが、思い当たる節はない。
(えっと……、なんなんだろう。ちょっと、怖いかも)
訳も分からず色々考えていると、いつの間にかほむらは用意された席に座っていた。
ちらり、と目線だけ動かして見ると、彼女は何でもなかったかのように荷物を取り出している。
自意識過剰かもしれないが、本当に過去に合っていて、自分だけ忘れているとすればとても失礼なことだ。
機会があれば、さりげなく聞いてみよう。
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