垣根帝督「協力しろ」鹿目まどか「ええ…」
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13:名無しNIPPER
2018/05/01(火) 23:01:53.66 ID:NRv/knmj0



美樹さやかと志筑仁美は姫名川沿いのランニングコースで鹿目まどかを待っていた。

別にまどかが遅刻している訳ではないが、生活習慣の違いか、自然と2人がまどかを待つ構図になっていることが多い。

「……ふぁ〜あ。あら、失礼」

さやかがボーっと川の流れを眺めていると隣にいた仁美が口元を押さえて涙目になっている。

あくびを噛み殺そうとしたが、声が出てしまったようだ。

「眠そうだね。昨日は日本舞踊だっけ」

「ええ。思いの外稽古が押してしまって、今日の授業の予習をしていたら深夜までかかってしまいましたわ」

仁美は裕福な家庭の箱入り娘であり、日本舞踊の他にもピアノや茶の湯など様々な習い事をしている。

もっとも、その大半は本人の希望ではなく、半ば両親からの強制らしいが。

「そんな状況でもちゃんと予習してくるあたりさすがは仁美だなあ。あたしなら誰かに聞けばいいやって思っちゃう」

私も本当はそうしたいのですけれど、と仁美は本音を漏らし、

「そうやって他の人に頼ってばかりいると、結局受験の時自分がしっぺ返しを食らうことになりますから」

「うへぇ……」

"受験"という単語が出た途端、さやかは露骨に嫌そうな顔をする。

「朝からテンション下がるようなこと言わないでよー。あー……、考えてみれば来年の今頃は受験に向けて皆ピリピリしてんだろうなあ」

彼女たちは現在中学2年生。あと半年も経たない内に3年生になる。

計画的な生徒ならもうそろそろ準備を始めているかもしれない。

「そうですわねぇ。そうなると、今みたいに登校前ゆっくりする時間も無くなるかも……」

「えー! あたしこうやって仁美と駄弁ってるの結構好きなんだけど。やだよ仁美ー、寂しいよー」

さやかはわざとらしく仁美に抱きつき、ゆらゆらと左右揺さぶる。

だが仁美にとっての受験が自分のそれとは意味が異なることは分かっている。

仁美とは小学校時代からの付き合いだが、彼女はその時から様々な習い事で忙しそうにしていた。

そういった事情や彼女の家柄を考えても、その辺の中途半端な高校への進学など許してくれないだろう。

有名なお嬢様学校か、難関大学への進学者を毎年多数輩出している進学校か。

お世辞にも勉強ができるとは言えないさやかには候補にすら挙げようと思わない学校に違いない。

別に学校が別になったからといって友達じゃなくなる訳ではないが、それでも今と同じようにとはいかない。

一緒にいる時間は、確実に激減する。

当然そういったことは口にも顔にも出さず、さやかはいつも通り明るく努める。

どうしようもないことは考えない。今を楽しく生きるのが彼女のスタンスだ。

「さ、さやかさん! どさくさに紛れて脇腹をつつくのはやめて下さい。ーーひうっ!」

「おやおや、今の声はなんですかな?」

しまった、という顔をする仁美。

こういう反応はさやかが一番喜ぶ類のものだ。

現に彼女の顔を見ると、ニヤニヤとガキ大将のような凶悪な笑みを浮かべている。

仁美は両脇を締めると、加虐心に目覚めた親友から逃げるべく、反対側から駆け足でこちらに向かってくるもう1人の親友に助けを求めることを決めたのだった。





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