116:名無しNIPPER
2019/05/29(水) 00:47:41.25 ID:fMCv71Lw0
別に誉望は自分をコミュニケーションの達人だとは思ってはいないが、少なくとも今この場においては不自然な事は言っていないはずだ。
世間話から始めて会話の節々から情報を集めようと思ったのだが、そもそも自然な会話に持っていくのに高いハードルがある。
誉望は直感した。
この少女から情報を引き出すのはとてつもなく苦労しそうだということに。
(もうコイツは諦めて他を当たるか。せっかちな垣根さんの事だから巴マミにも直接会いに行くんだろうし。どうせこんな奴なら大した情報も持ってないだろうし)
「ところで」
誉望がそんな失礼な事を考えていると、今度は少女の方から声をかけてきた。
「ん?」
「『魔女』とは何かしら?」
「…………………………………………、え?」
いきなり斜め上から飛んできた単語に、誉望の脳がフリーズした。
そんな彼を無視して、少女は告げる。
「今あなたが言った事よ。『魔女が襲ってくる』って。魔女って何? どこからそんな言葉出てきたの?」
「いやどこからって、それはさっき君がーー」
「言ってないわ」
誉望の言葉を遮って、少女は短く答えた。
「私は『敵』とは言ったけど『魔女』なんて一言も言ってない。だから不思議なの。普通、敵と聞いて魔女なんて言葉は思い浮かばないはず。なのにあなたはさも当然かのように『魔女に襲われる』と口にした」
「……、」
「教えて欲しいのだけれど。あなたはどこで魔女なんて言葉を聞いたのかしら?」
誉望は冷や汗が五割くらい増したと思った。
少女は先ほどとはうってかわって理路整然とした語り口で詰めてくる。
しくじった。
誰の目にも明らかだった。
さっきまで無関心そうに顔すら向けてくれなかった少女が、今は鋭い目つきで誉望の両目を睨み付けている。
まかり間違っても好奇の目線などではなく、警戒心と猜疑心に満ちた容疑者を取り調べる刑事のような表情だった。
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