170:名無しNIPPER[saga]
2018/04/30(月) 00:37:20.39 ID:LS54PsoZ0
「はぁ、はぁ……!」
大雨と強風の中、息を切らしながらみっともなく走る私を、通りすがる人々が奇異の目で見ます。
当然、気にしている場合ではありません。
一分一秒でも早く、会場へ――!
「きゃあっ!!」
突然、暴風が吹き荒れ、私の折りたたみ傘は一瞬で逆方向に折れ曲がりました。
「……ッ」
びしょ濡れになりながら、何とか直そうと試みます。
でも、どうやら骨がダメになってしまったらしく、元に戻りません。
ほたるちゃんとの、思い出の傘――。
せっかく買ったのに、数えるほどしか使わなかった傘。
――時期も概ね平年通りであり、さほど珍しい事態ではございません。
「……想定できたこと、ですね」
つまり、不幸ではありません。
土砂降りの雨の中、私はボロボロの傘をバッグに押し込み、前を向きました。
「ほたるちゃんのせいなんかじゃない!」
傘を持っていない方が、走りやすいものです。
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