小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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7:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:25:53.76 ID:WQSNhX7B0
それから放課後になると秘密基地に集まるようになって、名前も学年もそうやって知り合っていった。
じつは彼女は私よりもひとつ年上だった。けど私よりちょっと背が低くて、お人形みたいに綺麗な顔をしていた。

たぶん頭も良かったんだと思う。
彼女の言ってることはいつもむずかしかった。

「もし時間がまっすぐ前にしか進まないんだとしたら、太陽が毎日同じ時間に同じ高さにのぼるのはおかしいと思わない?」

「だって、地球は太陽のまわりを回ってるから……」

「地動説か天動説かって話じゃないのよ。今日が過ぎて明日になっても私たちは相変わらず朝8時に起きて夜10時に寝るでしょう? ちっとも前に進んでいかないじゃない。次の日の朝は32時に起きなくちゃいけないはずだわ」

「そんな遅くに目を覚ましたら遅刻しちゃうよ」

「そういうんじゃなくってえ……」

私たちは秘密基地の2つの大きな樹の間で時間のことについて話し合い、あるいは環境問題や少子高齢化問題のことについて話し合った。
と言っても私はもっぱら聞き役に徹していたけどね。

ほかにも、例えば学校のイヤな先生、好きな先生について批判を述べ、そして彼女は私に比べると嫌いな先生の割合がいくぶん多いように思えた。

「保健室の先生くらいかな。私あの人は好き。えこひいきとかしないし、優しいから」

私はなんとなく、彼女がクラスでいじめられているのではないかと疑っていた。
そしてそれはおそらく事実だったと思う。
でも彼女はそんなちっぽけな問題よりももっと大きな、つまり世界平和や宇宙の成り立ちといったものごとに関心があったみたいで、身近な話、たとえば家族とか友達についての話にはほとんど興味を示さなかった。


私たちは毎日のように秘密基地に集まっておしゃべりをした。

でもね。
今になって思うと、私はべつに彼女と会うことが特別楽しかったわけじゃなかった。

ただなんとなく、彼女に必要とされている気がしたのだ。
それが私の役割なんだ、って……

あるいは、憧れもあったと思う。
年上で美人だったし、賢かったし、一緒にうさぎを探して一緒に泣いてくれた、優しい人だったから。
だから私、いつの間にか彼女のことを「お姉ちゃん」って呼ぶようになったんだ。

名前? 名前は……なんだっけ?
もう思い出せないや。



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