小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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39:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:49:17.18 ID:WQSNhX7B0
「どうしたの、お姉ちゃん」

「文香ちゃんに呼ばれたの。べつにおどかそうって思ったわけじゃないよ?」

「透けてるみたいだけど……」

「ああ、これ? うーん、今日はちょっと調子が悪いみたいです」

お姉ちゃんは……卯月ちゃんは困ったように笑った。

明らかに無理してるって感じの顔だった。
私は椅子から立ち上がって卯月ちゃんに近寄り、その薄明るい腕を掴もうとした。

けど、もう遅かったんだ。
私の差し出した手は卯月ちゃんの半透明な体を通り過ぎて冷たい壁に行き当たった。

「……少しのあいだ、お別れですね」

私はいつの間にか涙を流していた。

ぽろぽろ。

自分の涙じゃないみたいに、それは私の思い出のなかから溢れ出てきた。

ぽろぽろ。
ぽろぽろ。

「いつかまた会えますよ、きっと」

「お姉ちゃんを……お姉ちゃんを返してよ」

卯月ちゃんは何も答えなかった。

私は最後に卯月ちゃんの天使みたいに優しい笑顔に触れようとした。

でも次の瞬間にはもう消えてなくなっていた。

私はその場にへなへなと座り込み、遊園地で迷子になった子供みたいに泣きじゃくった。……

暗転。

舞台の幕が降り、文香さんのナレーションが場内に響き渡る。

『――ただいまより○○分間の休憩といたします。席をお立ちの際はお手元に貴重品を――』

誰もいない劇場でたったひとり、私は第2幕が始まるのを待った。


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