小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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37:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:48:01.79 ID:WQSNhX7B0
「私の役割は、物語を語ることです。そしていま、私は美穂さんの物語を語っています。それが私の考えです」

「えっと……」

私は目をぱちくりさせて文香さんの言ったことの意味を考えようとした。
ぜんぜん分からない。

「私たちは語られることによってここに存在している、ということです。こんな経験をした覚えはありませんか? 本を読んでいる時、ふと登場人物が自分の思い出のなかに現れてくることが……あるいは、本のなかで起きた出来事と自分自身の思い出との区別がつかなくなるようなことが」

ある……ような、無いような。

「人は多かれ少なかれ思い出のなかに生きようとするものです。それは天使も例外ではありません」

私はふと、時計男のことを思い出していた。
思い出のかけらを食べて生きている哀れな天使の成れの果てについて……

「記憶が現実の小さなレプリカだというなら、物語もまた、記憶によって作られるもう1つの現実なのではないでしょうか?」

文香さんは手にしたペットボトルのふたの淵を指先でそっとなぞった。

「私はそのように考えています」

「……えーっと、つまり……」

私はなんとか話の要点をまとめようとしたけど言葉が出てこなかった。

「……すみません。やはり私はどうも説明するのが苦手で、それが私自身のことになると余計、むずかしいものですね」

「いえ、そんなこと」

文香さんはうなだれるように首をかしげてみせた。
それが自嘲の意味だと気付くのに少し時間がかかった。


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