小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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33:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:45:07.05 ID:WQSNhX7B0
ふと、こんなことを思った。

お姉ちゃんは私のファーストキスを奪ったけど、私もお姉ちゃんのファーストキスを奪ってしまったわけで、そうすると世界中にいる他の卯月ちゃんのファーストキスも同時に奪ったことになり、そのことについて他の卯月ちゃんは知ってるんだろうか?
あるいは、まったく気にもかけていないんだろうか?

もしかしたら地球の裏側では今もまだ映画を観続けている卯月ちゃんがいるかもしれず、あるいはもうすでに私以外の人にファーストキスを捧げている卯月ちゃんがいるかもしれなくて、私はそんなことを思うたびに胸が苦しくなるのだった。

隣ではお姉ちゃんがすやすや眠っていて、でも私はなんだか寝付けなかった。
だから夜のベランダに出ることにしたんだ。
ベッドからこっそり抜け出して、冷たい風と満天の星空にやさしく慰めてもらうために。
この宇宙のどこかには、星ひとつをまるごとキャンディにしてしまうという恐ろしいキャンディ爆弾が今も飛び続けている……



――夢のなかで朝を迎えた。

隣で寝ていたお姉ちゃんは居なくなってて、私はまた見えなくなっちゃったと思って一生懸命ベッドのうえを探しまわった。

そうしてくちびるに残っていたわずかな思い出に気付いて、お姉ちゃんが最後の別れのキスをしたんだと分かった。

私はぐちゃぐちゃになったシーツのうえで遊園地で迷子になった子供みたいに泣きじゃくった。

すべては泡のような思い出にすぎなかったこと、天使が作り出したにせものの記憶にすぎなかったことに

夢のなかでようやく気付いた愚かな人間が私だった。

私はエンディングテーマが流れ始めるのを待った。

でも夢の終わりにエンドロールはなくて、この悪趣味なシナリオを終わらせるにはもう一度最初から夢を見るほかに方法がなかった。

だから私は歌ったんだ。

あの歌を……


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