小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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24:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:38:20.19 ID:WQSNhX7B0
テレビ局から駅に向かうには万里の長城のすぐ横を通っていかなければならず、そのせいでここら一帯は見渡すかぎりに工事中の看板が立っているのだ。

万里の長城っていうのはまあ言ってしまえばスラングみたいなもので、あれの本当の名前はえーっと、なんだっけ。
なんとかベルトっていう覚えにくい名前だったのは覚えてるんだけど。

要するにそれは地球をぐるっと一周して繋げる超巨大な壁なのです。
完成するのにあと何十年はかかるんだって。
そのせいで世界中の多くの街は騒音問題に悩まされているらしいけど、でもベルトを建造することに反対する人は実はそんなに多くない。

なんでかって?
さあ、なんでだろう。
この突如あらわれた巨大建造物のことは、たぶん両親に聞いても学校の先生に聞いても誰も答えられないと思う。
いったい誰が最初にこれを作ろうって言いだしたのか、そもそもなんのために作られるのか、誰も知らないんだから。

おそらく天使のしわざだろうってみんなはそう言うけど、でもそれはあくまで「おそらく」でしかないので、べつに神様のしわざでもいいし秘密結社の陰謀ってことにしてもいいのだ。
もしこれがノアの箱舟なら、誰だって助かりたいって思うもんね。

「私はノアの箱舟じゃないと思う」

静かな喫茶店を探して私たちはそこに落ち着くことにした。
すると出し抜けに卯月ちゃんが言いだしたのだった。

「それってつまり二度目の大洪水は起きないってこと?」

「うーんとそうじゃなくて、あれはもっと身近に関係するものなんじゃないかなって思うんです」

「えーなんだろ」

私はあごに手をあててなぞなぞを考えるみたいなポーズをとった。

「ヒント」

「ヒント? ヒントはですね〜……うーん……私と美穂ちゃん、かな?」

「えーますます分かんないよ」

卯月ちゃんはオレンジジュースのストローを咥えてちゅーと吸った。
その「ちゅー」はまるで人類に偉大な閃きが訪れる直前みたいにまぬけな「ちゅー」だった。


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