小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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23:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:37:40.39 ID:WQSNhX7B0
その日の歌番組で私たちは楽屋で起きた珍しい出来事を雑談風にしゃべった。
まあスポンサーのあれこれでたぶんカットされるんだろうけど、とりあえず収録はおだやかに進行していった。

それから私たちはテレビのなかで平和と愛についてうたい、たまに恋愛にまつわるひどく個人的な歌をうたった。

でもそれがテレビの向こう側にいる人たちとなんの関わりもないなんて、どうして言いきれるだろう?

私たちは電波によって拡散され、あるいは切ったり貼ったり繋げたりする人たちによって分解され、そして平らな広告に引き伸ばされておまけにこんな宣伝句が添えられる。
わたくしたちはまごころをこめて安全と安心をみなさまにお届けいたします。
なるほど、遺伝子組み換えでないことを保証するのはいつだって自分以外の誰かなのだ。

あーあ。




収録が終わったあと、おたがい時間があったので駅まで一緒に散歩をした。

「おなかすいたねー」

「どこか寄っていきますかー」

「うーん、どうしようかなー」

駅までの道のりは大きな道路のこれまた広い歩道をまっすぐだった。
午後のすごしやすい時間なせいか、外はいつもよりたくさん人がいる気がした。
かんかんどんどん、ざわざわざわ。

「今日はあったかいねー」

「風がきもちいいですー」

私たちの会話が間延びしているように聞こえるのはべつにお腹が空いてるせいじゃなくて、ましてや太陽のせいでもない。

私は何気なく見上げた青空の、右側半分をばっさりナイフで切り取ったような巨大な万里の長城にむかって溜め息をついた。

「いつになったらあれ完成するんだろーねー」

「えー? なんですかあー?」

「いつになったら完成するのかなああってええ」

「あー! あれのことですかああ」

かんかんどんどん。
ぐるぐるぐるぐる。
工事の音がうるさくて会話もまともにできないよ。


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