小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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13:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:30:47.81 ID:WQSNhX7B0
私たちは秘密基地に隠された脱出のヒントを探すためにガラクタの山をあさってみた。

けれど私がそうやって思い出のかけらをひとつ掬い上げると今度はそれが次のふたつの思い出のかけらを呼び覚まし、結局キリがないのでおもちゃ箱をひっくり返すのはやめにした。

それに、そんなことをしなくても私はすでに分かっていたのだ。
この思い出を不完全なものにしている原因の正体について……

「秘密基地にね。友達がいたの……昔の話」

夕焼けの空をぼんやり見上げながら私は言った。
卯月ちゃんははしゃぎ疲れたのか地べたに座り込んで落ち葉をいじっていた。

「それがヒントなんですか?」

「さあ、どうだろう……」

私は卯月ちゃんに向かって、あるいは夕焼けに赤く染まっていくわたあめみたいな雲たちに向かって昔話をした。

むかしむかしあるところに……

「…………。」

私の不完全な思い出は言葉によって物語になり、そして私たちの現実はその物語のなかにあるのだった。
ハリボテの草木もできそこないの校舎も、綺麗な夕日や生ぬるい風も、みんなが私の話す言葉を静かに聞いていた。

私たちが本当に必要としていたもの、それは物語だった。

むかしむかしあるところに……つまり、そういうことだったんだね。

私は小さくあくびをした。
ふわぁ。
私のお話、退屈じゃない?

時計男は返事もしないで帰っていった。


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