小日向美穂「神様にはセンチメンタルなんて感情はない」
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12:名無しNIPPER[saga]
2018/04/24(火) 22:30:13.10 ID:WQSNhX7B0
「じゃあ、ここは美穂ちゃんの母校なんですか?」

「そういうことになるね。なつかしいなあ」

私の思い出はわりと単純な作りになっていて、辺りに生えている草木や校舎なんかはハリボテみたいにのっぺりしてリアルさを欠いていた。
けど2本の大きな樹や夕焼けの真っ赤な空、しめった草木の匂いはすごくよく出来ていたので懐かしさを感じるだけならそれで十分だった。

「脱出ゲームってことなんでしょうか? 思い出のなかには脱出するための色々なヒントが隠されてて……とか」

卯月ちゃんがあまりに呑気なことを言い出したので思わず笑ってしまった。

「え、え、私なにかヘンなこと言いました?」

「いや、でももしかしたら本当にそうなのかも」

私は卯月ちゃんの手をとって林の奥へずんずん進んでいった。

2本の樹のあいだに作られた秘密基地のすみっこにはガラクタがたくさん詰め込まれている。
牛乳瓶のふた、輪ゴム鉄砲、おもちゃの銀貨、道端で拾った漫画雑誌、誰のものかも分からない忘れられた小さな鍵……
そのどれもが与えられた役割の理不尽な空白を埋めるためにセピア色の光で自分たちを守っていた。

「わっ、これエッチな雑誌ですよ」

卯月ちゃんがボロボロになった雑誌をつまみあげて嬉しいだか不快なんだか分からない声で言った。

「美穂ちゃんもこういうの読んでたんですか?」

「たぶんそれ、クラスの男子がこっそり持ち込んだやつだと思う」

ポーカーフェイス。

「でもここにあるってことは、美穂ちゃんの思い出に強く残ってるものなんじゃないですか?」

う。
するどい。


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