7:名無しNIPPER[sage]
2018/04/20(金) 00:01:38.99 ID:lmgKjGix0
「えっと……本当にいいんですか?」
「へーき、へーき。何かあったら私が怒られるだけだし」
きちんとちひろさんに事情を話して許可は得ている。とはいえそれを言うつもりはなかった。
まさか彼女が明後日まで残りたい理由がオーディションがある日であって、そのオーディションの主催がこのプロダクションだなんて。
偶然にしてはできすぎている。そんな少女を見捨てられなかったのはどこか後ろめたい気持ちでもあったのかね。
「そういえばまだ自己紹介してませんでしたね。私は……」
「ん、ああいいっていいって。こういうのはさ、お互い知らなくていいと思うんだ」
実際のところは知りたくなかったのかもしれない。下手に深く知りすぎてしまうと何かあった時後悔しそうだ。
もし私が家出してここに来たのがなんとなくアイドルになりに来たなんて知ったら彼女に失礼な気がして。
「それにしてもアイドルかー。どうしてアイドルに?」
「子供の頃テレビで見たアイドルに憧れてって普通ですけどね」
憧れて……か。私にもそういうのがあればよかったのかもなあ。
それから彼女はアイドルについていろいろ語ってくれた。聴いてるうちに私なんかが本当になれるのかなって不安になっていく。
けれどもアイドルについて話してる彼女はとても楽しそうだったし、こんなに一生懸命になれる姿は私には羨ましくもあった。
話しているうちにうつらうつらし始めているのを見て、早めに寝るように促す。すぐに彼女のベッドから静かな寝息が聞こえだす。
「アイドル……か」
なんとなくという気持ちでアイドルになりに来たという自分からしてみるとこんな熱意のある子がまぶしくて仕方ない。
「寂しそうだったから……ね」
それは実家でスカウトしてきた時にどうしてと聞いた時に言われた言葉。
高校を卒業した時に周囲の皆は大学やら就職でそれぞれの道へと歩いていった。
そんな中一人私だけはどこへにも向かわず実家で和菓子を売りながら変わらない日々を送る。
そんな変化のないまま私の人生は終わるのかなってどこか諦めた気持ちでだらだらとしてたんだろう。
そんな時スカウトされて、少しだけワクワクした。けれども堅物な両親がそんなのを許してくれるわけもないし、
私自身どこか無理に決まっているって思っていた。だからこそその時は断ったんだ。断ったのに……
「なんかカッコ悪いな、私」
13Res/14.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20