4:名無しNIPPER[sage]
2018/04/20(金) 00:00:01.40 ID:lmgKjGix0
「ごめんなさい。○○は本日出張で不在なんです」
駅から出てすぐに見つかったプロダクションに入った私は受付にいる女性に例の名刺を見せ、スカウトされたことを伝えた。
受付嬢はすぐに電話で担当を呼びますのでお待ちくださいと答え、私はそのまま待っていた。
ほどなくエレベーターから蛍光色みたいな緑色の服を着た女性が掛けてきて、受付嬢の人と話したかと思うとこちらに向いてそう言ってきた。
「遅れました、私は○○のアシスタントをしております千川ちひろと申します。えっと……」
「塩見、塩見周子と言います。そうですか、○○さんは今日いないんですね」
「あいにく地方にスカウト活動に行ってまして早くても明後日になってしまうんです」
弱った、一応数日分程度なら滞在する路銀は持っているとはいえあまり遅いようだとここがダメだったとき困ることになる。
「塩見さんは何日かこちらに滞在する予定はありますか?」
「えっと……実は今日京都から来たばかりでまだ何も決まってないんです」
「それでしたらプロダクション関連の宿泊施設で○○が戻ってくるまで待ってていただけますか?もちろん費用はこちらが負担します」
渡りに船な提案に私は二つ返事でOKし、ちひろさんの案内でプロダクションのそばにあるホテルへと向かう。
フロントで待つように言われ、待っていると話を付けたのかルームキーを持ったちひろさんが戻ってきた。
「それではこれがルームキーです。○○が戻り次第ここに連絡するようにしますのでそれまではゆっくり東京観光でもしていてくださいね」
笑顔でそう告げたちひろさんはそそくさとホテルを出ていく。なんだか忙しそうな人だった。
案内された部屋は1人で泊まるには快適で、しっかりとした部屋だった。ホテルに泊まるなんて修学旅行以来かもしれない。
実家から持ち出した荷物を置き、とりあえず備え付きのベッドに横になる。夜行バスで寝たとはいえまだまだ眠り足りない。
とりあえず私をスカウトしてくれたプロデューサーさんが戻ってくるまでの間の生活はなんとかなりそうだ。あとは
「アイドルになれるのかな、本当に」
そもそもアイドルって何をすればいいんだろうか、そんな簡単になれるんだろうか、もしアイドルになれなかったら……
ぐるぐる悩んでいる間に私は襲ってきた睡魔に勝とうともせず、意識を手放すのであった。
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