128: ◆PL.V193blo[sage saga]
2018/04/23(月) 21:59:36.69 ID:uqQOtxCi0
なあ、楓。ひとつだけ、言うておかねばならん事がある。
おまんは一度だけ、己が俺の労苦の大元であるかのように言うたが、それは断じて違う。
おまんは、俺たちの生まれた故郷の事、覚えているじゃろうか。
ひもじかったよな。ひもじくて、貧しかった。
毎年のように娘は売りに出され、乳飲み子は冬を越せず亡くなった。飢えに耐え兼ねて自らの子を食ろうてしまう親もあった。
父母には牛馬のごたるこき使われ、いつも罵られ、殴られた。
食い扶持が増えたるのも、稼ぎが少ないのも、父が大病を患ってコロッと寝たきりになってしまったがも、母が得体の知れん与太者と懇ろになった挙げ句、薬で身を持ち崩したばも、俺のせいじゃった。
おまんが居るからあかんのや、無駄飯を食うて役に立たんガキじゃからあかんのや、とな。
しまいにゃ、父が博打で銭をスったも、母がたんすに小指さぶつけたのも、気に食わない事はとにかく、俺のせいにしとけという具合じゃった。
きっと、そったな思いをしたは、俺ばかりではね。あの時代の寒村さ生まれた者らは、みんなおんなし思いを味わっておった。
世の中が悪くなりゃあ、溜まってゆく呪詛の淀みは、力の無え者たちが引き受けさせられるのす。
俺らは皆、こったな酷ぇ時代に生まれた、みなし児でござんした。
誰が悪いわけでもねえ、貧乏が悪かったんじゃて、しょんないわ。
したけど、たまらんよなあ。せっかく生まれて来たのに、天地の狭間に俺たちの生きてても良い場所は無かったんじゃ。
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