129: ◆PL.V193blo[sage saga]
2018/04/23(月) 22:00:28.64 ID:uqQOtxCi0
行き場のない俺が、あの故郷の川で途方に暮れておると、おまんはどこからともなく近くに寄って来て、歌を口ずさんだな。
何者じゃと俺が振り返ると、おまんは兎のようにサッと身を隠してしもうた。こっちを向けと言うたら顔ば伏せて、そのきらきらの瞳を、中々見せてはくれねかったな。
最初の一言を交わすまで、ずいぶん、時間が要ったよな。
人見知り――いや。おまんはきっと、人が怖かったんじゃ。
人から優しくしてもろうた事など、無かったものな。俺らをひり出した父母もまた、俺らを要らぬと責めたのだもの。
そったなおまんが、なして俺の近くをちょろちょろと参ったのか、今はわかる。
おまんは、俺の事ば、励まそうとしてくれてたのじゃろ。ひとりで寂しそうにしちょる俺の為に、歌ってくれていたのじゃろう。
俺は男じゃから。そん事に気付いても、まるで己が哀れまれているような気がして、素直にそうとは言えんかったけど。
おまんの歌を聴きたいが為に、俺は一日を生きられたのじゃぜ。
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