17: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:32:15.37 ID:3cTkaN/s0
「その後は……正直なところ、僕は姉と疎遠になっていました。実家を出て大学で教職を取り、そのまま今の仕事に就いてようやく、そういえば姉はどうなったのだろう、と思ったくらいですよ……その頃はまさか、まだ夢を追っているなんて思いもしなかった。その後の姉のことは、あなたの方が詳しいでしょうね」
そこでいったん話を区切り、僕は紅茶を飲み干す。姉さんのプロデューサーは、僕の話を興味深そうに聞き入っていた。やっぱり、姉さん自身の口から姉さんの過去は語られていないのだろう。悪いことをしたかな、とも思うけれど、これはたぶん、僕が語らなければいけない話だ。
「公務員なんてつまらない仕事、なんて人もいますけどね。別に、機械のように無感情に仕事してるわけじゃあないんです。変わらない日常って言ったって、毎日何かしらの変化はある。それに」
言葉を選ぼうとして、結局僕は、ずっと思っていたことをそのまま口にすることにした。
「普通の人間ってやつはたぶん、そんなに変化の激しい生活はできないんですよ。芸能人って人種は、きっと特殊な例外なんです」
「お姉さんは、普通じゃないと?」
なるほど、分かりやすい。
姉に似て、腹芸のできない人らしい。
「普通じゃあないでしょう。子どもの頃の夢を抱いたまま、諦めることも折り合いをつけることもなく、諦めなければ夢は叶うって信じ続けて……明日はどうなるかも分からない、そんな毎日を過ごしている」
「それが、いけないことだと言うんですか?」
「ちょ、プロデューサーさん」
プロデューサーさんが立ち上がる。語気を荒げる彼にプロデュースされて……こんな風に怒ってもらえて、姉さんは幸せ者だと思う。
「だから僕らには、彼女の姿がとても眩しく映るんですよ」
彼の目をしっかりと見据えて、僕は笑った。
そう。僕にはこの二人に手を貸す理由がある。
「姉さんは……あなた方は、ウサミン星人ってやつを諦めるつもりはないのでしょう?」
僕の問いに、ソファに座りなおした彼は即座に頷いた。
「もちろんです。彼女がもういい、と言うまでは、私はウサミン星人としてのプロデュースを辞めるつもりはありません。彼女がそう望む以上は……彼女の理想とするアイドルとしての姿で、トップアイドルにしてやりたいんです」
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