8: ◆.s5ziYqd8k
2018/04/16(月) 22:06:57.34 ID:xaEfnyHJ0
『柱』とは言うけれど、建物としては京都にあるような五重塔が延々と続いているようなもの。
中には階段があって意外と観光客で賑わっている。私も含めてみんな同じ入場記念のレンズをぶら下げているのがいかにも、な気がする。
……人がたくさんいる。私はこういうとき、大して使い物にならない。急いで前髪を下ろして視界を狭めた。
そして、決まってやよいが私の前に出てくれる。申し訳なさは、私の弱い心にいつも負けている。
「ねえねえお兄さん、このガイドさんってどこでお願いすればいいですかぁ? ありゃ、お兄さんが。ガイドさんと。そいつぁ素敵なことで」
私の耳に届いた声は少し低い落ち着いた男の人の声。でも、若い。
「ユミカ、このイケメンさんがガイドだって! やったね今日は満点ホームランだ! そいじゃ行きましょうかー」
「……あ、の……よろしく、お願いします」
黒い髪、鳶色の瞳。朗らかな笑顔。
向こうの方で、年上の女の人がうらやましそうな声を上げるのが聞こえた。
でも。
……。
ほんの少しだけ、見下ろさないと目線が合わないのが、嫌だ。
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