16: ◆Hnf2jpSB.k[saga sage]
2018/04/12(木) 19:41:22.84 ID:b5T3fSU/0
あっという間に心配事を片付けたあたしに返ってきたのは、聞き慣れた音でした。
レッスン終わりに、あたしがパンを求めるときに聞こえてくる音。
でも、いまのはあたしじゃありません。
ということは……
「えへへー」
目の前でライラさんが可愛らしく頬を染めています。
「お腹、空いてるんですか?」
「実は昨日の朝から何も食べていないのですよー」
何ということでしょうか。
丸一日何も食べないなんて……
パンを食べられないなんて……
きっと、あたしならおかしくなってしまうでしょう。
そこまで考えて、あたしは自然とカバンを開けていました。
「これ、どうぞ」
「いいのですか?」
差し出したバゲットを前に、ライラさんがぱちぱちと目を瞬いています。
「はい。いっぱいあるので!」
本当のことを言えば、全部自分で食べてしまいたいのだけど。
でもきっと、これでいいんだと思います。
「ありがとうございますですよー」
ふんわり柔らかいライラさんの笑顔を見て、やっぱりこれで良かったんだって、そう思えました。
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