70: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:25:58.87 ID:x9sd9kyc0
「アイドルのプロデューサーか……」
あ、しまった。
71: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/14(土) 17:26:42.94 ID:x9sd9kyc0
そうしているうちに、あたしはもっと大きな失敗に思い至った。
思わず窓を見ても後の祭りだ。
四角く切り取られた宵闇が、そこには鎮座している。
72: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:08:30.33 ID:CS+tPRVL0
●
名刺に書かれていた会社の名前を調べてみたら、オーディションの会場はすぐに見つかった。
73: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:09:47.99 ID:CS+tPRVL0
よく晴れた初夏の朝だった。
入道雲の子供がぽつんと浮かんでいるだけの空は青一色で、とても眩しかった。
今日のあたしは、着物美人の看板娘から一転、イマドキの装いの18歳。
74: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:11:12.06 ID:CS+tPRVL0
「自社でやる余裕があればいいんだけれどな。残念ながら今日の会場は貸し会議室だ。えっと」
男の人が言葉に詰まる。
75: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:12:17.24 ID:CS+tPRVL0
「オーディション、受けに来たよ」
男の人は満足そうに頷いたけれど、すぐにその眉が少し顰められたのが分かった。
76: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:13:16.54 ID:CS+tPRVL0
ええい、ままよ。
「いやあ、それが色々あってね」
77: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:14:25.00 ID:CS+tPRVL0
塩見家が大揺れに揺れたここ数日のことは……今は思い出さないでおこう。
親には、オーディションを受けるとだけ言って出てきた。
本当のことなんか、言えるわけがない。
78: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:16:20.65 ID:CS+tPRVL0
まだ心配そうな顔をしている男の人に、にへらと笑顔で答える。
「そんな顔せんといてよ。まだオーディションに受かってもいないんだし。アイドルになれるとも決まってないんだからさ」
79: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:17:41.03 ID:CS+tPRVL0
そのときは多分、昨日までと何も変わらない。
あたしはただの周子のままなんだろう。
でも、もしそうでなかったら?
80: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/15(日) 12:18:45.38 ID:CS+tPRVL0
やりたいこともないのなら、大学に行ってもしょうがない。
テレビの偉い人たちは口を揃えてそんなことを言う。
ミッコにユカちゃんに青子は、やりたいことを探して大学生活を謳歌しているんだと思う。
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