37: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:24:26.19 ID:VXIG2kdO0
「ご、ごめんなさい」
結構な勢いで衝突してしまったけれど、転倒して掘割に落ちたりしなかったのは僥倖だった。
38: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:25:14.02 ID:VXIG2kdO0
「って、大丈夫か! どこか怪我したとか」
な、なんでそんな大げさなのさ。
39: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:25:58.72 ID:VXIG2kdO0
「ちがっ、う!」
羞恥でかああっと顔が火照る。
40: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:26:54.69 ID:VXIG2kdO0
男の人はなおも心配そうにこちらを伺っていたけれど、「じゃあ」と言いおいてあたしの脇を通り過ぎようとする。
あれ、そっちは……。
41: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:27:34.98 ID:VXIG2kdO0
「実は財布をなくして……。最後に買い物をしたのが多分この店だったんだ。……あああどうしよう」
百面相、と言う奴だ。
42: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:28:37.29 ID:VXIG2kdO0
「なーんや、ちょっと待ってて」
そう言いおいて、身を翻す。
43: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:30:10.98 ID:VXIG2kdO0
表に戻ると、男の人は門屋から少し離れたところで時計を気にしながら立っていた。
街灯に照らされた黒ずくめのスーツ姿は、アスファルトに伸びる椛の影が立ち上がったよう。
路地の中に妙に浮かび上がっているその姿をじっと見下ろしている、気の早い一番星と目が合う。
44: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:30:39.19 ID:VXIG2kdO0
「はい、これ?」
財布を差し出すと、百面相がぱっと輝いた。
45: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:31:25.39 ID:VXIG2kdO0
「どーいたしまして。じゃあ、あたしはこれで」
くるりと踵を返したあたし。
46: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:32:04.79 ID:VXIG2kdO0
「待ってくれ、お礼をしないと。自販機くらいしかないけど、1杯おごるよ」
思っても見なかった突然の申し出に、おもわず目をぱちくり。
47: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:32:34.37 ID:VXIG2kdO0
うーむ、あしらい方に手慣れたものを感じる。
結構場慣れしてそうだぞ、この人。
82Res/29.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20