34: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:21:56.35 ID:VXIG2kdO0
なにを?
高校を出て、およそ半年。
家で過ごしながら、あたしは何を考えていたの?
35: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:22:42.07 ID:VXIG2kdO0
悔しい!
脇目も振らずに、無言でその場を駆けだした。
悔しい、悔しい!
36: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:23:29.16 ID:VXIG2kdO0
背後から、お母さんの声は追ってこなかった。
庭を走り抜け、門屋の暖簾をはねとばす。
下駄ばきとは思えない速さで表通りに飛び出したけれど。
37: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:24:26.19 ID:VXIG2kdO0
「ご、ごめんなさい」
結構な勢いで衝突してしまったけれど、転倒して掘割に落ちたりしなかったのは僥倖だった。
38: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:25:14.02 ID:VXIG2kdO0
「って、大丈夫か! どこか怪我したとか」
な、なんでそんな大げさなのさ。
39: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:25:58.72 ID:VXIG2kdO0
「ちがっ、う!」
羞恥でかああっと顔が火照る。
40: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:26:54.69 ID:VXIG2kdO0
男の人はなおも心配そうにこちらを伺っていたけれど、「じゃあ」と言いおいてあたしの脇を通り過ぎようとする。
あれ、そっちは……。
41: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:27:34.98 ID:VXIG2kdO0
「実は財布をなくして……。最後に買い物をしたのが多分この店だったんだ。……あああどうしよう」
百面相、と言う奴だ。
42: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:28:37.29 ID:VXIG2kdO0
「なーんや、ちょっと待ってて」
そう言いおいて、身を翻す。
43: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:30:10.98 ID:VXIG2kdO0
表に戻ると、男の人は門屋から少し離れたところで時計を気にしながら立っていた。
街灯に照らされた黒ずくめのスーツ姿は、アスファルトに伸びる椛の影が立ち上がったよう。
路地の中に妙に浮かび上がっているその姿をじっと見下ろしている、気の早い一番星と目が合う。
44: ◆vOwUmN9Rng[saga]
2018/04/12(木) 22:30:39.19 ID:VXIG2kdO0
「はい、これ?」
財布を差し出すと、百面相がぱっと輝いた。
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