荒木比奈「ジャスト・リブ・モア」
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4: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:03:44.34 ID:BEFLqt5g0

「……」

涎を垂らし、だらしなく眠る彼女。そんな彼女の寝顔を見ると、彼女が授業中によく居眠りしていたことを思い出す。そして、受験期に、真剣な顔をして机へ向かっていたことも同じように思い出す。私がノートに落書きをしている間、彼女は苦手な英文法を克服しようとしていた、頑張って居た彼女の姿が脳裏に浮かぶ。

そんな彼女も、今ではもう大学生。受験に合格した彼女に、半ニートで、起きてご飯食べて漫画描いて寝て一日を終えるだけの私とは、全く違う世界の人間になっているような感覚を覚える。

高校のときは、おんなじオタクな女子高生だったのに。私が進学せずに半ニートでぐうたらして過ごしている間も、彼女は勉強して、バイトをして、就活をして、恋人と過ごして。

いつから、彼女とこんなに遠ざかっちゃったのだろう。そう少し考えて、遠ざかったのではないと言うことに気がついた。遠ざかったんじゃない。私が進まなかっただけなんだ。

モラトリアムにしがみついて、ずっと同じ所にいた私と違って、彼女は先に進んでいったんだ。

『比奈にもいつか、きっと夢が見つかるって!』

ビールを飲んで、顔を赤くした昨日の彼女。私への気遣いからか、励ましからか出たであろうその言葉が、一夜空けた今になって、私の心にのしかかる。

「夢……」

……思えば、私には夢も何も、したいことがなかった。ただ「誰にも邪魔されず漫画が描ければいいや」と、それだけを考えて。「やりたいことが見つかるまで」と、親にわがまま言って、一人暮らししながら漫画を描いて、「なんとなく」で過ごして、早一年。

私は未だ、自分が何をしたい人間なのか分からなかった。



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