9: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:36:54.47 ID:X17K8DuQ0
「あ……い……っ」
忍は何かを言おうとして、急に言い澱んだ。
何かに急かされるように、何かに怯えるように、笑顔がかちりと固まる。
ぐるぐると回る忍の視線は、次の言葉が本当のコトだとは思わせないのに十分だったけれど。
「えっと、その、うん。さ、最近興味が出てきたのっ」
「……そっか」
僕はそれ以上を聞けなかった。
きっとそんなに大事なことではないんだろう。
広いだけの音楽室にこれからはひとりじゃない。それだけで嬉しかったから。
「とりあえずよろしく。好きに使っていいよ」
「ん。ありがとね! 部長さん、よろしくお願いしますっ」
春はまだまだ霞の向こうだけれども。
春のようなできごとは思いがけずにやってきた。
僕と忍の奇妙な音楽室の同盟はこうやって始まった。
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