工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
1- 20
10: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:38:15.79 ID:X17K8DuQ0





 音楽室の住人が増えて何日か、分かったことがある。
 まず、忍のやる気はすごかった。

 どんな時間に来ても、もう学校指定のジャージに着替えて練習を始めている。
 終業チャイムが鳴ってから全力で音楽室まで走ったこともあるけれど、それでも勝てなかった。

 習慣だから別にすごくないとは本人の談だけども、それでも本気とは何気ないところから滲み出るものだ。
 それを聞いて、やる気もなく、目的もない自分がだんだんと恥ずかしくなった。


 それから、どうにも忍のやりたいことは特殊なのかもしれないと思った。

 忍は結局、音楽室の一角の机をどかしてしまって、広いスペースを作った。
 僕がギターを弾いているからその邪魔にならないようにと、僕の向かい、ちょうど反対側だ。

 最初に会った日のように、古いコンポで流行りのアイドルソングを流しつつ、それに合わせて踊ってみせる。
 調子が良い日は振り付けに合わせて歌ってみたりして。

 選曲はまぁ良いとして、ダンスに興味がある人は歌ったりもするものだろうか。
 そういうグループとかをテレビで見かけたりするし、なくはないのかもしれない。


 毎日音楽室に来て、手持ちの曲の中から一曲選んで、少しづつ振り付けを体に刻んでいく。
 失敗したらやり直したり、入念に動きや声色を確認したり。
 一曲を飽きずにひたすら演り続ける。単純作業のようにも見える行為をただただ繰り返す。

 努力家と呼ぶにふさわしい忍の姿を、僕は毎日見ていた。
 
 でも、燃える炎のような情熱の中の、どこにそんな燃料があるのか。
 それだけは、僕にもずっと分からないままだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
77Res/84.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice