7: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:35:28.48 ID:X17K8DuQ0
「勝手に使ってすみませんっ。その、誰も使ってない場所を探してて……」
「まぁ、気まぐれに使ってるからね」
「本当にごめんなさい! すぐ片付けてどっか行きますっ」
片付けて逃げていこうとする工藤さんを手のひらで慌てて静止する。
どう、どう。この子はなんというか気が早いな。
「ちょっと待って」
「え、えっと?」
事情は良く知らないけれど、下手なりに努力する姿勢は昔の自分と重なって見えた。
だからだろうか。工藤さんの眩しさにくらくらしつつも、僕はなにかしてあげたいと思い始めていた。
それとも、困っているのが女の子だから? だとしたら、なんて僕は俗っぽいんだろう。
浮ついた思考を振り切って、僕はできることを見つけた。
「どうせひとりしかいないから使ってもいいよ」
「ホントっ!?」
「うぉっ」
静止させようと向けていた手のひらを女の子の両手でぎゅっと包み込まれる。
汗ばんだ手のひらに少し高い体温。その向こうに見えるほころぶような笑顔。
そんなに喜んでもらえるとは思っていなくて、僕の心の準備はできていなかった。
至近距離で感じられる女の子の姿に、自分の体温が沸騰するように上がっていく。
「やったーっ♪ ホント困ってたんだ」
工藤さんは男の手を気軽に握ったことをあんまり気にしてないようだ。
ぱっと僕の手を放すと、くるくると回転してみせる。
熱に浮かされた目で追いかけると、2周目辺りでふらついて転んだ。
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