68: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:36:06.80 ID:X17K8DuQ0
それはきっと忍が夢見た光景そのものだった。
花のカチューシャ、フリルの付いたホワイトとピンクのドレス、所々にあしらわれたリボン。
田舎の芋っぽかった少女の姿には見えなくて、自分の目を何度も擦る。
それでも「可愛いもの全部のせ、王道アイドルでしょ!」なんて自信満々な顔は変わってなかった。
あの時よりもずっと上手くなった歌声で、ダンスで、忍がステージを駆け回る。
苦手だったはずの大振りのステップだって軽々とこなしてみせる。
上手くはないけれど、心を込めて、誰にだって伝わるような唄を歌ってみせる。
ずっと続いてきた努力の証がそこには確かにあった。
「みんな、ありがとう! ライト、すっごく綺麗だよーっ!」
忍がコールを送れば、たくさんのレスポンスが返ってくる。
何色ものスポットライトに照らされて、サインライトを自由自在に操って。
本気で見に来た人も、軽い気持ちで来た人も、誰もを惹きつけて止まない笑顔は絶えなかった。
今日は両親が来てるんだとか、青森のいいところならいっぱい話せるよとか。
合間、合間に挟まれるMCにも温かな拍手が送られた。
その度に忍は、揺れる横断幕やサインライト、名前を呼ぶ声に、心からのありがとうを返す。
「みんなー、楽しんでくれてるーっ? アタシはとっても楽しいよーっ!」
楽しくて夢のような時間はあっという間に過ぎていく。
踊って、歌って、話して、いつの間にかもう何曲も終わっていた。
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