5: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:33:32.22 ID:X17K8DuQ0
音楽室にはいつもひとりだったから、その景色は珍しいような、嬉しいような。
この時間は軽音部専用のはずだから、大方勝手に使っているんだろうけども。
扉を開けて中に入っても、背を向けたその子は自分に気付く様子はなくて。
周りが気にならなくなるくらい集中しているのだろうか。
声をかけるのもなんだか忍びないから、結局踊り終わるまでぼんやりと眺めていた。
「ふぅ……しんどいなぁ。もう少し、楽に踊れると、良いんだけど……」
踊り終わった女の子がこちらを振り返る。
ばっちりと目が合って、たっぷり10秒はお互いの時間が止まる。
女の子は、額に汗を滲ませて、頬を真っ赤にして、息も絶え絶えで。
それでも弱気な心を読まれてしまうような真剣な眼差しに気圧されてしまう。
それからよく顔を見て、少しだけ心が跳ねた。
有り体に言えば、目の前の女の子にときめく何かがあるような気がした。
惚れっぽい男の子じゃあるまいし。そんな気恥ずかしさを慌てて隠そうとして。
「えっ、あなた、誰!?」
「それはこっちのセリフだよ!!」
前言撤回。なんだこいつは。
思わず手に持ったギターを叩きつけたくなった。
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