工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
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3: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:30:07.72 ID:X17K8DuQ0





 青森の冬はかくも厳しく。
 研ぎ澄まされた冷たい空気は、身体の内から、外から、棘のように突き刺さる。
 きっと海風が真っ白な景色を吹き飛ばそうと躍起になっているせいだ。

 この灰暗い檻が目の前に立ちふさがって、どれくらい経っただろうか。
 あと1ヶ月もすれば春休みだというのに、春待つ伊吹はまだまだ雪の下に埋もれているみたい。

 なぜ教室を出るたびにこんな思いをしなくちゃならないんだろう。
 襲いかかってくる寒さに身体を震わせながら、肩にかけたギターケースを背負い直した。

 授業が終わって散り散りになっていく同級生たちは、真っ白に染まるグラウンドを睨みもしない。
 冬なんてこんなもんだ。青森に生まれたことを恨むんだな。
 多分誰もがそう思って、いつものように体育館へと向かう。

 校舎の3階に用事がある自分とは反対方向だ。


 うちの学校は、ほとんどの学生が運動部に所属している。
 なぜかスポーツが強くて、公立の星だと呼ばれてるらしいから。

 その煽りを受けて、文化部にいる人間は物珍しい目で見られることが多かった。
 たったひとりの軽音部も同じように壊滅的だ。

 なぜこの部は残ったままなのだろうとは思うけれど。
 凍える雪景色の中で誰がスポーツなんてやるのだろうと思うけれど。
 音楽室が悠々と使えるならば細かいことは気にしないことにしている。


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