工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
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24: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:50:37.71 ID:X17K8DuQ0


 天井をぴんと指す指先に、アコースティックギターの残響が重なって。
 急ごしらえのセッションは静かに終わった。

「あははははっ」

「くふっ、ふふふふっ」

 ふたりで同時に笑い出す。
 何がなんだか分からないけれど、おかしくて、嬉しくてしょうがない。
 気持ちを表現する言葉が分からないから、ただ感情が溢れるがままに任せた。

「なんで笑ってるのさ!」

「そっちこそ!」

 誰かと一緒に音楽をやることなんてなかった。
 ずっとひとりで弾いてきた音に、合わせてくれる人がいるだけでこんなに楽しいのか。
 初めての感覚に戸惑いつつも、それを刻みつけて絶対に忘れたくなかった。

 忍はとうとうお腹を押さえて、今度は別の涙を目の端に浮かべだす。
 さっきまで、昨日まで落ち込んでいた女の子の姿にはまるで見えなくて。

 この笑顔はきっと僕のおかげだ。
 そんなエゴのような気持ちが、跳ねる心臓の音を余計に煩くさせる。

 瞬きをする度に目の前の女の子をぱしゃりと心に残していく。
 忘れないように、いつだって思い出せるように。

 いつもより温かな空気は、音楽室を包んで、しばらく消えることはなかった。


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