23: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:50:03.40 ID:X17K8DuQ0
たどたどしいイントロのアルペジオに合わせて、忍の足が左右にステップを刻む。
うろ覚えの一発勝負だからリズムがいまいち掴めてない。
それでも忍の練習をずっと見てきたからか、なんとなく振り付けで分かるような気がした。
次は右手を回して、その次に左手。一歩前に出たらくるっとターン。
なんでこんなに覚えてるのか自分でも不思議で、つい弾く指に気合いが入る。
アップテンポなメロディを弦の音が追いかけていく。
忍は、あいかわらず硬そうな動きで、ところどころ誤魔化してるのが分かるけれど。
それでも、ちらちらと様子を見るような姿から、だんだんと意志の通った姿に変わる。
爪先まですっと伸ばした手足に、表情や視線の行く末にも心を込めて。
待ちきれなくなった歌声が早ったら、お互いに目を合わせる。
いつも必死そうな顔のくせに。なんでそんなに楽しそうなんだよ。
忍のとびっきりの笑顔が返ってくる。僕がどんな顔をしているかなんてもう分からない。
楽しい。
弦を揺らす指も手首も、跳ねるような気持ちで。
沸き立っていく心が奏でる音に乗るのを止められない。
釣られて僕も忍と声を合わす。気まずさなんて全部なかったかのように。
靴の擦れる音も、リズムを取る足の音もぜんぶ、ぜんぶ合わせて。
ちょっぴりズレのあった音楽は、互いのテンポを揃えて、あるべきカタチを作り上げていく。
77Res/84.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20