21: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:48:12.56 ID:X17K8DuQ0
こいつは本当にまったく。
そんな気持ちを表すように、長い、長い溜息をついた。
忍は勢いだけ先走っていくから、ちゃんと考えてるのか不安になる。
「どうしよう……お金あんまりないのに」
忍の落胆振りは、悲壮感が目に見えて分かるような気がするほどだった。
もう寿命だったとはいえ、大事な練習道具に自分の手でトドメを刺してしまったんだから。
きっと、自分のせいだという気持ちと、どうしたらいいのか分からない気持ちが混ざりあって。
渋い顔をしたり、切ない顔をしたり、ぐるぐると表情を変えた忍の目についに水たまりができる。
「……」
気持ちは分かるけど、女の子に泣かれると、僕が困るよ。
忍の気持ちが移ったのか、自分までどうしたらいいのか分からなくなってきた。
誤魔化すように視線を遠くにやる。広い音楽室の端から端を見やって。
自分のギターケースを、同じように音を奏でる道具を、見つけた。
なにかできることをしたい。
もう飽きるくらい聞いたアイドルソング。
自信なんかないけれど、本当にできるのか分からないけれど。
それでもこのまま悲しませているよりはマシな気がした。
「忍」
「っ……ん?」
「下手くそで良ければだけど……僕が弾くよ」
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