19: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 11:46:34.55 ID:X17K8DuQ0
できないって認められるってきっと大切だ。
山の頂上からのキレイな景色を見るためなら、小さなプライドなんてどうってことないと。
自分の力不足に悲しくも、苛立たしくもなるけれど、それでも山の麓で一歩を踏み出してみる。
助けを求めたって、泣き出したって構わない。
大切なことは力がないことじゃなくて、やる気が燃え尽きてしまうことなんだって。
だから、努力できることも立派な才能なんだ。
そんな自分理論な僕の気持ちは、忍に伝わったのだろうか。
体の硬さと戦いながら必死にストレッチをする忍の背中に心の中で問いかける。
ギターを抱えると、僕はAm、F、G、Cとコードを押えていく。
こんな簡単なことがずっとできなくて、何度も何度も諦めたけれど。
今、こうしてキレイな音が響く。そんなちっぽけな経験のおかげで誰かが歩きだせる。
そう思ったら、なんとなく淡々とやってきたことも悪くないなと思えた。
夢や憧れを燃料に山を途中まで登ったかいはきっとあったんだろう。
「ちょっと、お願い! 背中を押してっ」
また意志の炎を瞳に宿して、忍の大きな声が被さった。
弱気になったり、強気になったり本当に忙しいやつだ。
「分かった、分かった」
座ったままで体をずりずりと引っ張ってきて、忍がこちらの方に寄ってくる。
僕も、生返事をしながらギターを脇に置いて歩み寄る。
音楽室の端と端の微妙な距離感が少し縮まったような気がした。
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