1:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:45:17.98 ID:jMQx/ZfK0
谷風「お久しぶりだねぇ、谷風さんだ」
谷風「酒なんてのは不思議なもんで、笑いだしたり泣きだしたり、人と空気で具合が違う」
谷風「どんな呑み方もそれぞれ自由だが、忘れちゃいけないのは人に迷惑をかけないことかね」
武蔵「どうした相棒、さっきからちっとも呑んでいないじゃないか。まさかたったそれだけで酔ったなんてことはあるまい」
清霜「ねぇ武蔵さん、酔っ払うってどんな感じなの?」
武蔵「そうだな清霜……あそこに大和が二人いるだろう、あれが四人に見えるのが酔うということだ」
清霜「でも、うちの大和さんは一人だけだよ」
谷風「まぁ、少なくともこんな面倒臭い酔っ払いは一人で十分だ」
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2:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:46:15.94 ID:jMQx/ZfK0
谷風「さて、とある鎮守府に、艦隊指揮の腕前がめっぽう立つことで有名な提督がいた」
谷風「ところが白壁の微瑕、玉に瑕とはよく言ったもんで、人間長所があれば欠点もある」
谷風「この提督の場合、瑕ってぇのはとにかく大酒食らいなことだった」
3:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:47:00.63 ID:jMQx/ZfK0
谷風「ある日とうとう意を決し、このカミさんカッコカリはこう言った」
鳳翔「今日は天気も良いことですし、お酒の代わりに朝の散歩に出かけられてはどうでしょう」
4:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:48:01.80 ID:jMQx/ZfK0
谷風「ところがそれからしばらく経って、出た時にはまるで呆けた様子だった提督が、今度はえらく慌てて帰ってきた」
鳳翔「あら提督、どうしました? お酒はもうありませんけれど」
5:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:48:43.43 ID:jMQx/ZfK0
谷風「そう言って懐から取り出して見せた袋には、なんと金色の勲章がざっと四十ほど」
谷風「これには嫁さんカッコカリも驚いたが、少しばかり不審にも思った」
6:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:49:18.16 ID:jMQx/ZfK0
鳳翔「そんなにおめでたいことがあったのですから、少しお酒を呑んでお休みになられてもいいのではないでしょうか」
提督「珍しいな、鳳翔から勧めるとは……しかし、もう酒はないと聞いたが」
鳳翔「いえ、よくよく探したらあったものですから。勲章はここに置いておきますね」
7:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:50:06.52 ID:jMQx/ZfK0
提督「何を言っているんだ。鳳翔の勧めで今朝早くに散歩に行ったじゃないか」
鳳翔「今朝はいつも通り遅くに目を覚まして、思い出したように明石さんの酒保へ出かけられただけですが……」
提督「だったら、浜辺で拾ってお前に渡した勲章は」
8:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:50:54.14 ID:jMQx/ZfK0
谷風「何とかその場は治まったが、これはとんでもないことになったと頭を抱える提督」
提督「ああすまない鳳翔、私が酒ばかり呑んでくだらない夢を本気にしてしまったせいで……」
9:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:52:10.94 ID:jMQx/ZfK0
谷風「それから提督は、それはもう人が変わったように酒を断ち、先陣を切って作戦に参加した」
谷風「元々指揮の腕は折り紙付き、めきめき頭角を現して、一年後には元帥になり」
谷風「その頃には資材を借りた分の勲章もすっかり返し終わっていた」
10:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:53:19.67 ID:jMQx/ZfK0
谷風「そう言って差し出したのは、なんと金色の勲章四十個」
谷風「これには提督も仰天して言葉が出ない」
11:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:54:15.14 ID:jMQx/ZfK0
提督「まったくお前は何を言っているんだ。その勲章を隠したのは私を第一に考えての事じゃないか」
提督「そんな気遣いの出来る嫁と、別れる男がどこにいる」
提督「鳳翔、これからもずっとそばで私を支えてほしい」
12:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:55:17.06 ID:jMQx/ZfK0
鳳翔「今日はめでたい記念の日ですし、少しくらいお酒を呑まれてもいいのでは」
鳳翔「あなたが禁酒を始められた後も、実はずっと隠して取っていたんです」
13:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:56:06.91 ID:jMQx/ZfK0
谷風「次に行く前に、一つだけ野暮な注意を聞いてくれるかい」
谷風「酒の噺は上とも下とも繋がってるせいで、どうしても汚くなりがちだ」
谷風「成人指定ってまでどぎつくないが、次の噺はほんの少しだけ下ネタが入るよ」
14:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:58:39.25 ID:jMQx/ZfK0
谷風「とある離れ小島にある鎮守府の周りには、これが見事に何もない」
谷風「テレビもラジオもないもんで、楽しみと言ったら月に二回の本土からの定期便」
谷風「海軍の便だから雑誌やら何やらも自由に持ち込めない、必然娯楽は食糧類……つまりは酒に集中する」
15:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 00:59:23.43 ID:jMQx/ZfK0
千歳「どうして、と言われても……私達は最近特に変わったこともなく」
伊14「日が昇ったら目覚ましに一杯呑んでー」
Pola「昼は白ワインがいいですねぇ〜パスタとよく合うんですよ〜」
16:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:01:41.67 ID:jMQx/ZfK0
提督「毎日呑んでばかりで、もう半月も出撃してないだろうと言ってるんだ」
千歳「だって……ねえ?」
伊14「近頃は鎮守府近辺まで深海棲艦が来ることはほとんどないし」
17:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:02:40.34 ID:jMQx/ZfK0
提督「お前たちは昨日も散々呑んで騒いで、深海棲艦がすぐ近くまで来たことにも気付かず」
提督「あまりの警戒のお粗末さに、向こうも砲撃せずに石だけ投げて帰っていったんだぞ」
提督「まったく舐められてるだろう? こんな様では我が鎮守府の沽券にかかわる」
18:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:03:32.68 ID:jMQx/ZfK0
谷風「呑兵衛共もこれには堪えて、これからはきちんと出撃する、禁酒だけは勘弁してくれと言うが、提督は一切聞く耳を持たない」
谷風「いつの間にこしらえたやら、鎮守府の入り口に関所を置いて、積み荷の運び込みの時には自ら検査を行うと宣言した」
19:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:04:28.75 ID:jMQx/ZfK0
谷風「次の定期便の日、関所で積み荷の検査を行う提督の所へ向かう艦娘が一人」
Pola「提督ぅ〜Polaお酒は諦めて別のものを飲むことにしましたぁ〜」
20:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:05:10.48 ID:jMQx/ZfK0
提督「どれ、味を確かめてみるか」
谷風「と、一口飲んだ提督は真っ赤になって、」
21:名無しNIPPER[saga]
2018/03/26(月) 01:06:37.40 ID:jMQx/ZfK0
谷風「そういうが早いか、提督は瓶をすべて奪い取り、あっという間に飲み干してしまった」
提督「ウーイ……とにかくしゃけはいかんからな、絶対にとおさんぞぉ」
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