1: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:45:03.12 ID:afcOeBV+0
モバマスよりアナスタシアと一ノ瀬志希がメインのSSです。
独自解釈、ファンタジー要素、一部アイドルの人外設定などありますためご注意ください。
前作です↓
輿水幸子「事務所に帰ると狸が死んだふりをしています」
ex14.vip2ch.com
最初のです↓
小日向美穂「こひなたぬき」
ex14.vip2ch.com
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:48:33.69 ID:afcOeBV+0
あるところに、女の子がいました。
女の子は、冬が嫌いでした。
3: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:49:43.52 ID:afcOeBV+0
【一ノ瀬志希かく語りき・そのいち】
冬が好きって言うと意外そうな顔をされる。
4: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:50:39.91 ID:afcOeBV+0
それに、雪の色にはそれなりに親しみがある。
ちゃんと覚えてるんだ。
5: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:51:36.41 ID:afcOeBV+0
もちろん気温が上がれば雪は融ける。
わざわざ融点の計算式を引っ張り出すまでもない自明のこと。
春になって形を失い、水となって地面に飲まれ、そのカタチは跡形も残らない。
6: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:53:10.71 ID:afcOeBV+0
―― 3月某日 事務所
一言で言えば異常気象だった。
7: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:56:54.14 ID:afcOeBV+0
近日開催されるこのフェスは、かなりでかいハコを押さえたプロダクションの一大イベントだ。
もちろんうちの部署からも何組か出演する。
みんなこの日の為に仕上げてきており、そのクオリティに今さら疑問を差し挟む余地も無いものの……。
8: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:58:20.40 ID:afcOeBV+0
「さむいー」
「乗んな」
「くんかくんか」
「嗅ぐなっ」
9: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 00:59:08.80 ID:afcOeBV+0
「なあ志希」
なのでひとつカマをかけてみることにした。
10: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:00:09.85 ID:afcOeBV+0
志希は一人暮らしをしている。
しかも一軒家である。
11: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:01:07.19 ID:afcOeBV+0
天気が天気だからここに来るまでにも一苦労だった。
寒さに身を縮めながら、一度は仕舞った筈の一番分厚いコートを動員してまでやっと辿り着く。
12: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:03:24.58 ID:afcOeBV+0
凍り付いたような石畳の道を行き、門と同じくリモコンキーの玄関扉を開けた時、奥から声がした。
「ふふふ……とうとうここまで辿り着いたようだね……」
「この声は……?」
13: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:04:47.33 ID:afcOeBV+0
「今お台所に立ってたんだ〜。二人ともランチまだでしょ?」
「んー、そいえば昨日からなんにも食べてない気がする」
「それはもうちょっと気にしろよ。俺もまだだけど」
14: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:05:58.32 ID:afcOeBV+0
午前11時30分、外は暗い。分厚い雪雲が空を完全に覆い隠してしまっている。
冷えに冷えた体に、あつあつのラーメンは実際ありがたいものがあった。
スープまで一滴残らず飲み干したところで、話はいよいよ本題に移る。
15: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:11:34.27 ID:afcOeBV+0
一ノ瀬邸には「開かずの部屋」がある。
寝室だ。
16: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:12:47.40 ID:afcOeBV+0
開いた瞬間ものすごい冷気が廊下まで侵食した。
俺はその時、遊園地によくある「アイスワールド」だか「氷の世界」だかを思い出していた。
館内が極低温に保たれた、いわば極寒の体験型アトラクションで、よくミラーハウスとかと隣接していたりするアレ。
17: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:13:33.99 ID:afcOeBV+0
「たまに起きて話すんだよね」
吐く息は雲のように白かった。
18: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:19:53.39 ID:afcOeBV+0
【一ノ瀬志希かく語りき・そのに】
そこそこ前のことになるんだけど、あたし失踪しました。
19: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:21:14.77 ID:afcOeBV+0
と、米屋さん(フレちゃん)が指し示す方の空は暗かった。
「向こうの方、雪降ってしるぶぷれー?」
20: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:22:31.40 ID:afcOeBV+0
長い長い曲線道路の只中に、もう使われてなさげなボロっちいバス停があって。
白い女の子が、そこにぽつんと座っていた。
女の子は不可思議な大雪を当然のように受け容れながら、時刻表の剥がれた跡を見上げていた。
21: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2018/03/23(金) 01:23:22.54 ID:afcOeBV+0
ぼへぼへぼへぼへぼへ、とカブちゃんのエンジン音が近付くと女の子はびっくりしてた。
「はろはろぼんじゅ〜」
「あたし達とイケてるお薬キメないかーい」
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