55:名無しNIPPER[saga]
2018/03/21(水) 01:14:24.39 ID:EAF0Yir90
「人は荒波に飲み込まれても進まなければならない時があるか…だから貞ちゃんは…」
「それってどういうことですか?」
「昔…貞ちゃんが将来の夢を教えてくれて…女優さんになりたかったらしいの…」
それは貞子がこの島を出る時に語ったことだ。
貞子にはある夢があった。それは将来女優になって舞台に立ちたいという夢。
別にそれは特別なことではない。
こんな辺鄙な島に住む女の子なら誰しもが一度は夢見ることだ。
だが貞子は夢見る女の子では終わらなかった。
風の便りで大人になった貞子はとある劇団に入ることが出来たらしい。
「確か飛翔という劇団だったかしら。そこで頑張っているという話を聞いたわ。」
「けど…貞子さんはもう亡くなったんですよね…」
「ええ、今にして思えばあの子のことを止めれば良かった。
それでも貞ちゃんは止められなかったかもしれない。あの子は本気だったから…」
貞子がこの島を出て行く日。それは今と同じく海が大荒れしていた。
それはまるで貞子がこの大島を出ることを禁じるかのようだった。
だがそれでも貞子はこの島を出てしまった。
たとえ誰に止められようと明日を夢見る少女を誰が止められたというのか…
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