84:1[saga]
2018/03/25(日) 13:57:53.88 ID:CE9RRJAi0
73.
有馬さんは少し目を見開いて、しかし大した動揺も見せずにいた。
「私は恋をしたことがないので、よくわからないんです。私は唯先輩のことを……独り占めしたいって考えてます。……ごめんなさい気持ち悪いですよね」
「そんなことないよ。僕だって1人のことばっかり考えて独り占めしたいと思うことあるよ」
「だってそれは……!」
男女の恋だから。
でも有馬さんは、報われない恋だった。
「僕が恋を語るなんて変だけど、恋なんてのは一つだけではないと思うんだ。いろんな恋がある。ただいろんなそれに、人が勝手に恋って名前を付けて一つにしちゃったんだよ」
私は唯先輩とずっと一緒にいたい。
私を見て欲しい。
私に、私だけのあなたでいて欲しい。
「君の気持ちに名前をつけるな。君の想いは言葉で表現するには、言葉は無能すぎるんだ。それが恋かどうかなんて関係ない。そのわからない気持ちを伝えたいと思った時に、伝わるかどうかが問題なんだ」
私たちは特別で、私たちは唯一だった。
私は唯先輩に気持ちを伝える。
気持ち悪いこの気持ちを、あなたに知って欲しい。
「しっぽがなくて嬉しいときどうやって表現できるっていうんだい?」
「……誰の言葉ですか?」
「スヌーピー」
有馬さんは私の方を見た。
「君の『しっぽ』は、手の中にある。精一杯頑張っておいで」
「……伝わるでしょうか」
有馬さんは可笑しそうに笑って、
「伝わるよ。だって……」
有馬さんは何かを隠すように考えた後、
「君たちは、似ているから」
私たちは、表現者。
告白をしよう。
私たちの音楽は、言葉を超える。
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