56:1[saga]
2018/03/24(土) 22:36:08.08 ID:N9NZ/oAL0
48.唯side
公生「唯ちゃん、起きて」
夢から覚めると、私の肩を揺らす有馬先生が目の前にいた。いつもみたいに優しく笑っている。
公生「バーベキュー始めるみたいだよ。中野さんは先に行ってる」
唯「有馬……先生……」
有馬先生はタオルを差し出す。
公生「ほらこれで汗拭いて? 夜は寒いから風邪ひくよ」
唯「うん、ありがとうございます」
私が身体を拭き始めると、有馬先生は私に背を向けた。
公生「僕は1人じゃないよ」
唯「…………?」
公生「僕には椿がいる。それに渡もよくコンクール見に来てくれるし、井川さんや武士ともよく飲みに行ったりする。凪ちゃんもね」
あの人も。有馬先生の思い出になったあの人も、有馬先生と一緒にいるのだろう。
公生「唯ちゃんはどうだい?」
私はどうか。私は梓ちゃんに出会ってから、
唯「私も1人じゃないよ」
そっか、そう言って有馬先生は笑った。
公生「じゃあ唯ちゃんも大丈夫だね」
目の前の壁にたじろいで、以前の私なら越えようとさえしなかったそれに苦しんでいた。
有馬先生も同じだった。有馬先生もちょうど私と同じくらいの時期に、壁にぶちあたっていた。
私の先生に、10年ほど私より先に生まれた私の先輩に、私は8年前から憧れていたのだった。
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