51:1[saga]
2018/03/24(土) 22:26:03.75 ID:N9NZ/oAL0
43.
演奏が終わった。私は、それに唯先輩も一歩もその場から動けなかった。
しばらくすると、上を見上げていた有馬さんが私たちに気づく。
公生「……あれ、ははは。2人とも、いつからそこに?」
あ、えと……
公生「……ごめん、ちょっと待ってて」
有馬さんは泣いていた。私たちに背を向け、必死にそれを隠していた。
公生「あはは……恥ずかしいね。大の大人が、情けないね」
そんなこと。
梓「そんなことないです」
私は麻痺した脳を叩き起こし、突き出すように言った。
梓「とても……なんていうか……その」
私が口ごもっていると、有馬さんはいつもみたいに笑った。
公生「唯ちゃん、大丈夫かい?」
唯先輩はただただ有馬さんを見つめていた。やがて私に寄りかかり、膝からかくっとおれて座り込んでしまう。
唯先輩の目からは、大量の涙が流れ落ちる。それでも唯先輩は一点を見つめ、有馬さんを捉えていた。
唯「わ……たし……」
有馬さんが歩み寄る。かがんで唯先輩に目線を合わせる。
唯先輩はしゃっくりをする。一言一言、繋ぎ合わせるようにして、唯先輩は、
唯「やっぱり私は、絶対私は有馬先生みたいになりたい」
そう言ってしばらく唯先輩は、呆然として圧倒的な感情に触れながら、ただただひたすら有馬さんを見つめていた。
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