18:1[saga]
2018/03/20(火) 21:32:00.58 ID:NiGcwUvh0
16.
ーー私、唯先輩に、もう一度ピアノを弾いて欲しいんだ。
唯先輩もきっと、それを望んでいる。唯先輩はずっと音楽室に、ピアノのそばにいたのだ。
弾いて欲しい。いや、私の中では多分違う。
聞かせて欲しいんだ。あの音を。レコーダーでではなく、私のために弾いて欲しい。
私は音楽室のドアを開ける。
「あ、梓ちゃん!」
ピアノの前に座る唯先輩は、とても小さくて危なっかしいように見えた。
私は無言で、唯先輩の前まで歩く。唯先輩は不思議そうに、ちょっと怯えたようにしていた。
「唯先輩」
これは、愛の告白だ。
私はあなたの音に、恋をした。
「私と一緒に、コンクールに出てくれませんか」
桜舞い散る校庭、音楽室の窓際にも桜が舞い降りていた。
しばらくの空白。緊張の間隔。
唯先輩は口を開けて固まっていた。突然でびっくりしてるよね。
唯先輩はしばらくただ私の目を見つめ、一度だけ小さく頷いた。
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