62:1[saga]
2018/03/18(日) 22:54:21.44 ID:61wO2nel0
50. 梓side
私は唯をそっと抱き上げた。疲れ切ったような顔で、でも幸せそうな顔をしていた。
冷たい身体に打ち付ける、私の涙は不規則なリズムを刻んだ。
私は唯のために何もできなかった。声が喉に濾過され、呼吸する音だけが残っていた。
もしも私が交通事故に遭わなかったら、こんな世界にならなかったのかな。
「きゅうべえ」
さっき聞いた話。この世界は世界線という考え方でできている。過去を変えれば、今も変わるという話を。
上手く過去の出来事を変えると、唯や憂ちゃん、ムギが魔法少女になったことが無かったことになり、また私が今魔法少女になったところで、今の私が魔法少女になるだけであり、新しく出来る世界の私も魔法少女と無関係だ。
私の願いは、唯に夢を見せてあげられる。私も、澪も、律も願った、素敵な夢を。
「きゅうべえ、契約しよう。私は……」
過去を変える。きゅうべえにはそれも出来ると言っていた。
バタフライエフェクト。
初期値を変えれば、未来は劇的にかわる。
交通事故なんか、なかったことになってくれる。私はどうせ、学年が変わっても軽音部に入っているだろう。
私は、誰でもない私の願いも込めて、きゅうべえに向き直った。
「私は、唯の後輩になりたい」
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