49:1[saga]
2018/03/18(日) 21:57:56.47 ID:61wO2nel0
38. 数秒前 澪side
唯を助けなきゃ、そう思って部屋に飛び込んだ。次の瞬間見たのは、悪魔のような唯の顔と、地獄のような惨劇だった。
「ゆ、ゆ、唯……? これ、これは一体……」
怖かった。人間が何で出来ているのか、それが一瞬のうちに教え込まれたかのようだった。
「澪ちゃん、前の化学の授業でやってたよね。砂糖に濃硫酸かける実験。どう? 人間ってさ、水と炭素。こんなに簡単に出来てるんだよね」
人間が死んだ。その光景はあまりにショッキングで、甘い人生観をぶち壊された。
「なんの……冗談だ……?」
「私ね、悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて愛おしくて、死んじゃいそうだよ。でも死ねないの。ムギちゃんがくれた命だから。憂が守ってくれた命だから」
唯はまるで別人だった。口調だけが一緒の、別人格だった。唯はこんなことは絶対に言わないし思わない。これは理想や幻想なんかじゃない。親友の信頼だ。
「じゃあね、澪ちゃん。憂には私が死んだように伝えといてくれないかな。憂にこれ以上、迷惑かけたくないんだ……」
「ちょっと待て唯!」
あの目は私を見ていない。あの目は私を知らない。
でもこれだけは、言っておきたい。
「私は今まで唯のこと、親友だと思ってたよ」
唯は少しだけ驚いたような表情を見せると、
「私もだよ、澪ちゃん」
そう笑って唯は、ここ7階の窓から飛び降りた。私は急いで下を覗くと、唯の姿はもう消えていた。
69Res/77.38 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20