28:1[saga]
2018/03/18(日) 00:16:56.33 ID:61wO2nel0
私はふーん、とジュースをストローで吸っていた。
「でもさ、今でも20%なんだったら、私たち、いらなくなっちゃうのかな」
私はつい、思ったことを垂れ流してしまった。
『かもしれないね』
「だとしたら、ちょっと寂しいね」
「そんなことはないと思うわ」
えっ、と私はムギちゃんを見た。
「だって唯ちゃん、昨日、本当は自分だけであの魔女を倒せてたって分かってたんじゃないの?」
憂にもムギちゃんにもできないこと。私には空間転移がある。
転移させるのが枝ではなく、首だったら。誰も動くことなく倒せると思ったのは事実だ。……でも、
「でもね、それが成功すればいいけど、失敗したら2人に申し訳ないと思って。せっかく3人いるんだもん。それにほら、あれ結構扱うのが難しいんだよ。ぽんぽん続けては打てないし」
「さすが唯ちゃん。そこまで考えてたんだね。だったらさ、憂ちゃんも同じように考えるんじゃないかな?」
「同じ、こと?」
「多分憂ちゃんも、自分が強いってことは自覚してる。でも、昨日は全て私と唯ちゃんの動きを前提にして戦ってたわ。3人なら安全だから。3人ならあったかいから。唯ちゃんが言っていた言葉よ」
『そうだね。確かに憂は、主体的に行動してなかったように見えたよ。君たちの動きを自分の行動の原因にしていた。これは多分、今までの人生がそうさせているんだろう』
そうだったのか。もしそうだとすれば、私はあまり憂を理解できていなかったのかもしれない。
『憂は賢いから、わかっているんだよ。自分が姉よりも子供だということを。姉よりも幼くて、下だということをね』
「え、憂が幼い? 私、今までの真逆のことを言われ続けてきたよ? 唯は幼くて憂の妹みたいだって」
『そうかな。僕から見たら説明しにくいくらい自明のことなんだけどね。中野梓同様、憂は君に依存している。ひょっとして君は、中野梓の幼さにも気づいていないのかい?』
「そ、それは、」
気づいている。あずにゃんは、私よりどうこうってことは考えたことはないけれど、少なくともりっちゃんや澪ちゃんよりは幼いと私は思っている。
あずにゃんは真面目でしっかり者だ。あずにゃんの幼さはその性格で覆い隠され、自分で気づくことができなくなっている。
「……あずにゃんにはね、先輩か後輩が必要だと思うんだ。甘えられる先輩か、怠けている後輩。それかその両方」
『そうだね、中野梓は不安定なんだよ。今軽音部には先輩も後輩もいない。甘えられる人も、威厳を張れる人もいない。中野梓にとって、同級生はあまりにどっちつかずで中途半端なんだよ。君が殆ど勉強しないで赤点を回避したテストで、真面目なはずの中野梓が赤点をとるはずがないだろう』
まあ、確かに。私はそれを不思議に思ってたけれど、少しだけ納得がいった。
あずにゃんが真面目なのは、他の人を見て「しっかりしなきゃ」って思っているからだと思う。あずにゃんは責任感が強いから。
そんな「しっかりしなきゃ」って思える人が、今はいないんじゃないかな。だからあずにゃんはちょっと怠けちゃって、テストで失敗したんだと思う。
「私があずにゃんの後輩になってあげられればいいんだけどな〜」
私はジュースを飲み干した。私は溶けて小さくなった氷を飲み込んでしまって、少しだけ苦しくなった。
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