22:1[saga]
2018/03/18(日) 00:05:06.71 ID:61wO2nel0
20.
「紬ちゃんは、いつ魔法少女になったの?」
私はすっごく美味しいモンブランに自然に笑顔を溢しながら、粗方の裏事情を聞き終わった後で尋ねた。
「私はちょうど5ヶ月前くらいよ。その日も今日みたいに暖かい、春の日だったわ」
「なんで魔法少女になったのかは……聞かないほうがいいですか?」
憂は言い出した途中でまずいと感じたのか、気まずそうに上目遣いで紬ちゃんを見た。
「大した理由じゃないのよ。ただ、」
紬ちゃんは少し寂しそうな表情をして、
「友達がほしい、ってきゅうべえにお願いしたの」
紬ちゃんは少し目頭を押さえて、
「でも友達になったその子、死んじゃったの。私と友達になったばっかりに、魔女に殺されたの」
紬ちゃんはなんでそんなことをお願いしたのだろう。紬ちゃんには合唱部にたくさん友達がいるように見えた。
『それは君と同じ理由だよ、唯』
私と同じ理由。
「親友がほしかった、ってことなのかな。それなら、私と一緒だね!」
私はばっと立ち上がった。
「わ、私もね、中学までは友達は和ちゃんしかいなかったんだ。みんなと喋れるけど、みんなと距離がある」
ーー唯は、変わってるよね……
そんな言葉が思い出される。
「私が紬ちゃん……えーっと、むぎちゃん! そうムギちゃんのお願い、叶えてあげるよ!!」
私はムギちゃんに抱きついた。ムギちゃんは柔らかくって、あったかかった。
「今日から一緒に帰ろ? あっ、おいしいアイスクリームのお店に連れてってあげる! それから明日学校休みだからお洋服でも見に行こう! 憂も来るよね?」
2人はポカーンとして私を見ている。憂は思い出したように、ぶんぶん首を縦に振った。
「夜は3人で一緒に戦おう? 3人だったらきっと安全だし、あったかいよ」
「唯ちゃん……」
私はムギちゃんの頭を撫でた。ちょうど、和ちゃんがやってくれるみたいに。
「私、贅沢だね。2回もお願い、叶っちゃった……」
ムギちゃんはそれからしばらく、ありがとう、と言い続けながら泣いていた。
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