唯「奇跡も、魔法も、あるんだよ」
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15:1[saga]
2018/03/17(土) 23:57:55.08 ID:Kkr9l5xs0
12.

川の水の音が聞こえてくるほど静かだった。虫たちの鳴き声が心地よく耳に響いた。

ここは思い出の河原だ。一年生のとき、受験勉強をする憂に悪いと思ってここでキーボードの練習をしていたところに、買い物帰りのあずにゃんが通りかかった。

その頃は私はまだ楽譜も読めないくらい初心者で、それからよくここであずにゃんと楽器の練習をしていた。

ここに来ればあずにゃんを思い出せるような気がして、なんとなく会えるような気がしてここに来てしまっていた。

……現実は、受け止めなきゃだめだよね。

『僕なら君に、夢を見せてあげられるよ』

びっくりして私は仰け反った。

「きゅうべえ!」

その時あの言葉を思い出す。

ーー魔法少女になってくれたら、なんでも一つだけ願いを叶えてあげる。

『まあ落ち着きなよ。僕は君に最後のチャンスをあげに来たんだよ』

「あずにゃんを生き返らせることってできる?!」

私の目の前に舞い降りてきたきゅうべえに、私は掴みかかる。変な呻き声を聞いて我に返り、必死に震える体を抑えた。

『ああ、もちろん。その魔法を使うために必要なのは、魔法のステッキでもすごい薬でもなく君の意思だ』

「じゃあお願い! 私、魔法少女になるよ!!」

その時、突然後ろから抱きつかれた。

「お姉ちゃん! な、何、突然どうしたの?!」

「う、憂」

何で憂がここに、なんてのはよく考えれば当たり前だった。憂はほんとに優しい子だ。心配して後をつけてくれたなんて、迷惑をかけてしまった。

『君の妹かい?』

「うん、そうだよ」

『じゃあこの子にも声を聞こえるようにしてあげるよ。この子は……すごい才能の持ち主だ』

憂はきゅうべえに気づいたようで、

「お姉ちゃん、これ、なに?」

「きゅうべえっていうんだ。私の願いを叶えてくれるんだよ!」

「お姉ちゃんの願い?」

夜空の星たちのように。夜空の一等星のように強く、私は言った。

「あずにゃんを、生き返らせるんだよ!!」



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